夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
「シャーリー。扉は開けておいてくれ。俺が君を呼ぶこともあるから」
「はい」
 資料室へと入った彼女を確認してから、ランスロットは目の前のジョシュアを睨んだ。
「いい加減、自分の部屋へ戻れ」
「お前……。本当にかわいそうな奴だな。シャーリーは、まだコルビーなんだな」
 ジョシュアが笑った原因は、彼女が名乗った姓が原因だったらしい。
「うるさい」
 ランスロットが顔を真っ赤にして答えると、ジョシュアはすっと席を立った。
「これ以上、ここに長居すると、そろそろ私の護衛に気づかれそうだから。逃げるよ」
 先ほどは警護が「迎えに来るまで」と言っていたにも関わらず、今度は「逃げる」だ。間違いなく、今の言葉の方が正解だろう。
 ジョシュアは「頑張れよ」と手をひらひらと振って部屋から出て行った。その背中を、ランスロットはちっと舌打ちをして見送った。
「シャーリー」
 ジョシュアの姿がいなくなったところで、ランスロットは彼女の名を呼んだ。
「はい」
 返事をした彼女は、隣の部屋から姿を現した。
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