夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
「書類のやり取りはこのテーブルを使う。俺が君に確認して欲しい書類はこのテーブルの上に置いておく。だから君も、俺に渡す書類があるときはこのテーブルの上に置いておいてくれ」
 ランスロットはソファの前にあるローテーブルを指し示す。
「わかりました」
「事務室には顔を出したのか?」
「いえ。まだ」
「では、先にそちらに顔を出してこい。事務官たちも、君が復帰することを待っていたようだから。その間、俺は君に確認してもらいたい書類を準備しておく」
「ありがとうございます」
 彼女はまた頭を下げた。
 ランスロットはそれがもどかしかった。何かあるたびに、彼女は頭を下げる。その行為が、二人の間に壁を作っているようにも思えた。
 パタンと閉められた扉から目を離せずにいた。
 彼女との距離は、どうやって縮めることができたのか。ランスロットは過去に想いを巡らせる。

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