揺れる瞳に恋をして
「ただいま」

「ただいま〜」

夏希の家に帰る


いそいそとDVDの準備をして

お菓子と飲み物も

ソファに座り
映画を見てると


「ちー」

「ん?何?」

「最近、何も無い?」

「え?何も無いって?」

「変な事とか」

「何も無いよ?」

「そう、ならよかった」

変な事を聞いてくる

私の日常は変わらず
夏希がいないまま

毎日過ごしているだけなのに


「…夏希」

「ん?」

「私達、仲直りできるのかな」

「…出来るよ」


まさかの返答だった

「もうすぐ、できる」

もうすぐ…?

今日は出来ないのかな

「…待ってて」


そういって
夏希は
私の手を

ぎゅっと握った


「うん…」

返事をして

足を抱え
顔を膝に付ける

「ちー?」

「…ん?」

「…泣いてるの?」


「…ううん」

「…うそ、泣いてるよ」


グイッと私の顔を持ち上げる夏希

私はボタボタと流れる涙を隠すように
手を顔につける

「ちー、こっちみて」

「…やだ」


見せられない

なんで泣いてるのって聞かれても

答えられない


「…ちー」

「…」

止まらない

溢れて、止まらない

私の涙も

君を好きだと思う気持ちも

溢れて溢れて

零れていく
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