無茶は承知で、今夜あなたに突撃します
 さっきまでニコニコと上機嫌だった佐夜子さんが、私の言葉を聞いて信じられないとばかりに静かに首を横に振った。

「それ、本気?」

「はい。……あ、でも、かわいそうだから誰か紹介してあげようとか、そういうのは大丈夫です! その男性が気の毒なので」

「なに言ってるの。知鶴ちゃんが結婚できないわけないでしょう。その気になれば引く手あまたよ」

 心底あきれた表情で言われたけれど、にわかに信じがたくて、あいまいに首を傾げた。
 私が口にした内容は謙遜でもなんでもなくて、本当にそう思っているから。

「以前、上京してきた幼馴染と私がランチに行ったことがあったのを覚えてますか? 太一っていうんですけど」

「……ああ、うん」

「小学生のころ、太一に言われたんですよ。お前はどうせ誰とも結婚できないだろうから、遠くに行かずにずっとここにいろ、って」

 太一は昔からずっとガキ大将で、自分に自信のない私とは正反対だった。
 なんでも即断即決するのは当たり前で、それだけでは飽き足らず、人の世話まで焼いていた。
 それは今も変わらなくて、自分の周りの人たちすべてを気にかけながら生きている。
 誰しもができることではないから、その部分は密かに尊敬している。

「でもさぁ、それ、好きな女の子に意地悪を言っちゃう典型的なやつじゃない?」

「……え?」

「だから! 要約するとね、ほかの男と結婚せずに一生俺のそばにいろよ、って意味」

 佐夜子さん、意訳が過ぎます。
 太一には美季ちゃんがいるし、過去にも彼女がいたことがあるし、私を好きだなんてありえない。
 まだ小さかったころの太一の顔を思い浮かべ、フルフルと首を横に振った。

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