無茶は承知で、今夜あなたに突撃します
「その幼馴染くんがどういう言い方をしたのか知らないけど、知鶴ちゃんは真面目だから素直に受け取っちゃったのね。だけどそれだって石器時代くらい大昔の話でしょ? もっと自分を高く見積もって!」

 石器時代という表現がおかしくて、話を聞きながらクスクスと笑ってしまった。
 こうしていつも私を励まして、妹のようにかわいがってくれる佐夜子さんには感謝しかない。
 彼女の気持ちに応えるためにも、いつまでもウジウジしていられないとばかりに両手で握りこぶしを作って気合を入れた。

「佐夜子さん、ありがとうございます。おかげで志賀さんに再度突撃する覚悟ができました。とにかく当たって砕けます」

「でも!!」

 佐夜子さんが自然とファイティングポーズになっていた私の手首をすかさず両手で掴んだ。
 ビックリして視線を上げると、心配そうな彼女の瞳と視線がぶつかる。

「ここを辞めたりしないでね。恋愛と仕事は別よ!」

 驚いた。さすがは佐夜子さんだ。
 田舎に戻って太一の実家である蕎麦店で働くことも考えているなどと、そんな話は一切していないのに、するどい佐夜子さんはなにか勘が働いたのだろう。

「ぜ、善処します」

 仕事に戻った私は、デスクにあるカレンダーとにらめっこを始めた。
 佐夜子さんに当たって砕けてくると宣言したものの、やはり決戦の日は金曜日がいいなと見当を付ける。
 それは今週の金曜か、心の準備も含めて来週にするか迷うところだ。

 もう一度食事に誘えばいいのだろうか。
 それとも、好きですと自分の気持ちを簡潔に伝えるだけでいい?

 どうしようかと考えを巡らせたが、告白をして瞬時に撃沈するだけの行動は、覚悟していても寂しいし悲しい。
 どうせなら最後に食事をして、美しい思い出を胸に刻みたいと欲が出てしまう。

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