無茶は承知で、今夜あなたに突撃します
 玄関で靴を脱ぎ、リビングへ通された私は、座るように促されたソファーに腰を掛けた。
 そこでようやく左手が解放される。

 ここに来たのはもちろん初めてだから部屋の間取りまではわからないけれど、ひとりで住むには充分広そうだ。

「……ごめん。強引すぎたか? ちょっと冷静にならないとな」

 ひとりごとのようにつぶやいた志賀さんはスーツの上着を脱ぎ、キッチンで冷たい麦茶をグラスに注いでリビングに戻ってきた。
 それをテーブルに置き、私の隣にそっと腰をおろす。

「青が好きなんですか?」

「……え?」

「家の中、青系が多いなと思って……」

 目の前にあるテーブルはグレーの木目調だけれど、ソファーとラグは濃青で、カーテンはそれより薄い青色だ。
 そうやって統一されているからか、とてもオシャレな空間だと感じた。

「青は集中力を高める効果があるらしい」

「そうなんですかぁ」

 勉強熱心な志賀さんだから、家で集中するための工夫なのかもしれない。
 反対になにも考えていない自分が恥ずかしくなってくる。

「そんなふうに観察できるなんて結構余裕あるんだな。部屋に連れ込まれたっていうのに」

 彼の言葉が夢見心地だった私を一気に現実に引き戻した。
 好きな人の生活空間に入り込めたとうっとりしている場合ではない。話をしに来たのだ。

< 70 / 81 >

この作品をシェア

pagetop