無茶は承知で、今夜あなたに突撃します
「男の人は一般的に、気持ちがなくても抱けるって言うじゃないですか。だからお願いすればなんとかなるかと……」

「俺は無理だ。好きな女しか抱けない」

「そう、でしたか……」

 考える素振りも見せずに即答された。
 私はなんてバカな試みを企んだのだろう。初めから勝算はゼロだったのだ。
 彼の女性関係が派手ではないと薄々知りながらも計画を実行した時点で、こうなる結末は予測できていたけれど、あのときはわずかな希望を捨てたくなかった。

「なんでそんなに落ち込むんだよ。誰かれ構わず抱く男のほうがよかったか?」

「いえいえ!」

 誠実な志賀さんのほうが好きに決まっている。
 自然とうつむいていた顔を上げれば、彼のやさしい瞳と視線が交錯した。
 どうやら怒ってもいないし、あきれてもいないようだ。

「俺も君が好きだ」

 彼にそう言われ、思わず両手で自分の耳を荒っぽくこすった。

「今、とってもうれしい幻聴が聞こえました。私の耳、どうかしちゃったみたいです」

「俺の告白を幻聴扱いするなよ」

「え?! すみません!!」

 この期に及んで自分に都合のいい言葉が聞こえるなんてと自分自身にあきれたけれど、幻聴ではなかったらしい。事態を飲み込めない私は一気にパニックに陥る。

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