無茶は承知で、今夜あなたに突撃します
「純真でいい子だなって前から思ってた。あの夜は好意を持たれてる感じがしたのに、週が明けたら君は俺を徹底的に避けただろ? 真逆の態度を取られたから、嫌われることをなにかしたかなと……」

「それはないです」

 志賀さんはなにも悪くない。だから考えすぎないでほしい。
 こんなふうに悩ませてしまった原因はすべて私にあると自覚した途端、猛烈な自己嫌悪に襲われた。

「最後にした、あのキスがいけなかった?」

「違います! むしろうれしかったです」

 好きな人にキスをされて、うれしくないわけがない。
 心臓が口から飛び出るくらいドキドキしたけれど、そのあとは多幸感に包まれていた。
 あれを一番幸せな思い出としてこの先の人生を生きていこうと、本気で考えたくらいだ。

「恩師に、早く捕まえろって言われたよ。たしかに君の態度を気にして静観するなんて、全然俺らしくない。それに、ライバルもいるみたいだしな」

「ライバル?!」

「カフェ店員の男」

 思わず首を横に振ったものの、聖くんからも告白めいた言葉をもらったのを思い出して、視線を足元に下げた。
 冗談を真に受けてはいけないと思い込んでいたけれど、ハナから冗談だと決めつけるのも聖くんに対して失礼だったと、今さら反省の気持ちが湧いてくる。

「モテてるよな」

「からかわないでください。志賀さんのほうがよほどモテますよ。四方さんとだって仲がいいじゃないですか」

「四方さんにはほかに好きな男がいるよ。そいつにヤキモチを焼かせたいから協力してくれと頼まれただけだ。今夜、俺と一緒にいるところを見せつける計画だったらしいが、男が来られなくなって中止になった」

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