無茶は承知で、今夜あなたに突撃します
 私の口内をたっぷりと味わった彼が、突如覆いかぶさるようにソファーの上で私を押し倒した。
 見上げた志賀さんの表情は飲み込まれそうなくらい妖艶で、瞳に熱が宿っていた。

「……待って」

「待たない」

 耳元で艶っぽい声を出した志賀さんが、そのまま私の首筋にキスを落とす。
 この状況はもう、まな板の鯉になるしかない。彼はもっと先に進む気だ。
 なるようになれ、と目を閉じていたら、くっ付いていた彼の身体が離れていく気配がした。

「眉間にシワが寄ってるし、身体が硬直してる」

「……え?」

「もしかして、初めて?」

 やさしい口調で尋ねられた質問に、私は瞬時に首を縦に振った。
 実は今まで生きてきた中で、男性とベッドを共にした経験がない。
 見栄を張っても仕方がないので正直に答えたものの、面倒くさくて引かれたかもしれないと不安になってくる。

「そうなのかなって、最初からちょっと思ってた」

「……ごめんなさい」

「謝ることじゃないけど、経験がないのによく俺をホテルに誘おうとしたよな。ほんと、めちゃくちゃだ」

 ハハッと笑みをこぼした彼が上体を起こしたので、私もゆっくりと起き上がる。
 恥ずかしさと情けなさと不安が入り混じって、感情の整理が追い付かない。

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