無茶は承知で、今夜あなたに突撃します
 金曜日の夜、定時で仕事を終えた私と志賀さんは、連れ立ってビルを出た。
 学校から一緒に家に帰る高校生カップルの気持ちがよくわかる。並んで歩くだけでうれしくて仕方ない。

「身体、大丈夫?」

「もう大丈夫です。心配しすぎですよ」

 あれから志賀さんは、身体は痛くないかと毎日私に尋ねてくる。
 初めての痛みは翌日まで違和感があったけれど、もうすっかり消えたと伝えているのに。

「それと、聞こうと思ってたんだが、田舎に戻る件はどうなった? なにか悩んでそうだったけど?」

「もちろんこっちに残りますよ。志賀さんをあきらめるには離れたほうがいいかなって考えてただけですから。今は逆に、離れるなんて嫌です! ずっとそばにいます!」

「そっか、悩みのタネは俺だったのか」

 なにも悪くないのに「ごめんな」とつぶやきながら彼が私の頭を撫でる。
 とても甘くなった今の志賀さんが、さらに私を深く溺れさせている。要するに、どうしようもないくらい彼にメロメロだ。

「今日うちに来ないか? 泊まっていけば? 明日休みだしこの前よりゆっくりできる」

「き、着替えが……」

「必要なものはどこかで買えばいいよ」

 必要なものといえば、下着とか、化粧水やハブラシかな?
 志賀さんの部屋着を借りて、ブカブカだな~なんて言いながら幸せをかみしめたりできるのだろうか。
 憧れのシチュエーションが頭に浮かんでくれば、自動的に顔が緩んでしまう。

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