ふられたラブレター

第二章

さくら(付き合ってって···一体どういうこと!?)

思いもよらない颯真の言葉に混乱するさくら。

一旦地下鉄を降りホームで向かい合う二人。
少しの沈黙の後、話を切り出すさくら。

さくら「あの、昨日“ごめんなさい”って···私ふられましたよね?」

さくらの問いかけに焦る颯真

颯真「それはっ、あまりにも突然だったからびっくりして。だからって逃げるようなことしてごめん。」

「···本当は俺も前からさくらのこと気になってたんだ。」

さくら「でも···手紙も受け取ってもらえなかったのに?」

颯真(ゔっ、だよな···)

颯真「昨日と言ってることとやってることが正反対で、信用してもらえなくて当然だよな。本当ごめん。」

颯真はさくらに頭を下げ謝罪した。
そして真っ直ぐさくらを見てこう言った。

颯真「けど、すぐには諦めたくないからもう一度だけ俺にチャンスが欲しい。」

さくらはしばらくうつむき考えた後、ゆっくり口を開き答えた。

さくら「じゃあ···昨日渡せなかった手紙、読んでもらえますか?」

颯真の硬い表情が少しだけ明るくなる。

颯真「うん、もちろん。絶対読むよ。」

さくら「···わかりました。そしたら明日の朝渡しても良いですか?」

颯真「良いよ。明日楽しみに待ってるから!」

嬉しそうに笑顔を見せる颯真が昨日とは別人のように違い過ぎて、わけがわからないさくら。

ただ颯真の真剣な表情や謝罪からは、彼が嘘をついているようにはどうしても思えなかった。


○地下鉄の中 放課後

学校が終わりみっちゃんと別れた後(みっちゃんは部活)さくらは一人で地下鉄のドア付近に立っていた。

頭の中では、朝の一連の出来事が駆け巡っていた。

さくら(朝起きたことっていまだに信じられないんだけど、もしかして夢オチじゃないよね?)

(現実だとしても、明日になってまた颯真くん豹変してたらどうしよう···。)

(颯真くんに付き合ってって言われて嬉しいはずなのに···なんか複雑な気分。)


ナンパ男「ねぇ、その制服って星女学院だよね?友だちになりたいんだけど、良かったら連絡先交換しない?」

気がつくとさくらの目の前には見知らぬ男子高校生が立っていた。

さくら「ご、ごめんなさい。」

中高女子校育ちで男の子が苦手なさくらはうつむきながら断る。

ナンパ男「そんなこと言わないでよ〜。仲良くしようよ、ねっ?」

さくら(ごめんなさいって言ってるのになんで〜)

さくらが困っていると···

颯真「勝手に人の女に手出してんじゃねーよ。」

颯真がさくらの肩に腕を回しながらナンパ男を睨みつけた。

さくら(颯真くん······!!)

ナンパ男「チッ、なんだ彼氏持ちかよ。」

ナンパ男がそそくさと去って行くとさくらは気がぬけてふらついてしまったが、颯真がしっかり抱き止めた。

颯真「さくら、大丈夫か?」

さくら「うん。颯真くんありがとう。」

颯真「心配だから送ってく。」

さくら「えっ、もう大丈夫だよ。」

颯真「だーめ。俺が大丈夫じゃないから。」

さくら ドキン···

颯真の言葉に胸が高鳴るさくら。

颯真「手、つないでも良い?」

戸惑いながらもさくらがうなずくと、颯真はさくらの右手を優しくにぎった。
そして
「家に着くまでこのままな。」
と少し照れながら言った。


○さくらの家の前 放課後

さくらの家の前に着くと、颯真は名残惜しそうに自分の左手をそっと離した。

さくら「家まで送ってくれてありがとう。」

颯真「今日はゆっくり休めよ。それと···手紙って今貰うこと出来る?」

さくら「うん、わかった。今持ってくるね。」

さくらは部屋の引き出しからラブレターを取り出すと、少し震えた手で颯真に渡した。

颯真「ありがとう。ちゃんと読むから。」

さくら「うん···。じゃあ、またね。」

颯真「おう、また明日な。」


○颯真の家 夜

部屋で机に向かい勉強をする颯真。

コンコン

颯真の部屋のドアをノックする音が聞こえる。

颯真「はい、どうぞ。」

ガチャ

和真「よう。今日一日なんとかバレずに済んだわ。」

そう言い放つのは颯真にソックリな顔の、茶髪でピアスをした双子の兄和真だった。
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