ふられたラブレター

第七章

和真が落ちたスマホを拾い顔を上げると、視線の先には驚いた表情で和真を見つめるさくらがいた。

和真(えっ、なんでさくらがここにいるんだ!?多分ってか絶対ストラップ見られたよな···。)

(けどせっかく付き合えることになったんだ、今はまだバレるわけにはいかない······!!)

そう思った和真はさくらにニッコリ笑いかけると······

和真「さくらちゃんだよね?俺颯真の弟の和真って言うんだけど、前に地下鉄で颯真と一緒にいるところ見かけて···」

さくら「え、えぇっ?弟さん!?確かに、よく見ると顔がそっくり。」
(昨日動物園で話してた弟さんだよね?)

和真「うん、よく言われる(笑)
それよりさくらちゃん聞いてよ〜颯真の奴、朝課題の提出があるからって早く家出てったんだけど、スマホ家に忘れて行っちゃって。」

「そんで、しょうがないからこれから俺が颯真の学校まで届けに行くとこなんだ。」

そう言って和真はスマホをさくらに見せた。

さくら「そのスマホ、颯真くんのだったんだぁ。」

「スマホについてるウサギのストラップ、昨日颯真くんとおそろいで貰った物だったから最初見た時なんでここに···って思ってびっくりしちゃった。」

和真(ハァーなんとかごまかせたみたいで良かった。)

「驚かせてごめんな。あっ、ストラップと言えば颯真さー、昨日家に帰って来るなりずっとデートの話ししてんの。」

「めっちゃ楽しかったって、おそろいのストラップも大事にするって言ってたよ。」

さくら「颯真くんそんな風に言ってくれてたんだぁ。嬉しいな。」

さくらは目をほそめて、頬を赤くして恋する女の子のような顔で和真にそう言った。

和真(うわっ、なんて顔してんだよ。あー今すぐ隣に行って抱きしめてぇ。)

可愛さのあまり和真は心の中で悶えていたが、落ち着きを取り戻すとさくらに問いかけた。

和真「···そう言えばさくらちゃん、颯真と付き合うことになったんだよね?」

さくら「はい、昨日告白されて。私もずっと颯真くんに片思いしていたんですごく嬉しかったです。」

和真「おめでとう。これからも兄をよろしくお願いします。」

さくら「はい!こちらこそよろしくお願いします。」

その時地下鉄が停車駅に着いた

和真「じゃあ俺達ここで降りるから。さくらちゃんまたね!」

さくら「はい、さようなら。」


○和真達が降りた地下鉄のホーム

男子高校生1「おい和真!いつのまにあんな可愛い子と知り合いになってんだよ。」

男子高校生2「それもそうだけどさ、お前弟じゃなくて双子の“兄貴”だろ?なんで嘘ついてんだよ。」

和真「まぁ、いろいろあって···誰だって秘密の一つや二つくらいあるだろ?」

男子高校生3「なんだそれ(笑)それより早く課題出さないとまたヤバイことになるぞ!」

バタバタと走りながら学校に向かう和真達

和真(まさか同じ地下鉄にさくらがいるとは思わなかったからマジ焦ったー···。けど秘密がバレなくて良かった。)

(てゆーか、さっきのさくらの顔···ヤバイくらい可愛かったな〜。放課後は必ず迎えに行ってめちゃめちゃ優しくするからな。)


○さくらの教室 授業中

さくら(颯真くんに会えるかもと思ってたら、まさかの弟さんに会っちゃった。顔も背丈も、どことなく声も···颯真くんに似ていたなぁ。)

(颯真くんに会いたいよ···早く放課後にならないかなぁ。)

キーンコーンカーンコーン

さくら(颯真くんからまだ連絡来てないけど、もうすぐ着くかな?)
スマホ片手に帰る準備をするさくら。

みっちゃん「朝から気になってたんだけど、そのストラップ可愛いね〜買ったの?」

さくら「うん、昨日動物園に行って···」

みっちゃん「動物園?へー誰と行ったの?」

さくら(みっちゃんには言った方が良いよね。)

さくら「あの、颯真くんと一緒に行って···実は付き合うことになったんだ。」

みっちゃん「えぇー!!ホントに!?」

みっちゃんの声に反応して、クラスメイトが皆一斉にこっちを見る。

さくら「みっちゃんシー!私もまだ信じられないんだけど、みっちゃんには伝えておきたくて。」

みっちゃん「私も信じられない(笑)けど、喜ばしいことだよね!さくらおめでとう。」

「詳しい話聞きたいとこだけど、これから部活だからまたゆっくり教えて!」

さくら「うん、わかった。部活頑張ってね!」



○さくらの学校の前 放課後

さくら(あっ、颯真くんいた。)

さくら「颯真くん!」

校門の前で待つ颯真(和真)に声をかけるさくら。

颯真(和真)「おっ、さくらお疲れ〜。」

いつものように手をつないで歩く二人。

さくら「今日の朝、地下鉄で颯真くんの弟さんに会ったよ!」

一瞬、ドキッとする颯真(和真)

颯真(和真)「そうなんだ〜。忘れたスマホ届けてもらった時に俺も和真から聞いたよ。」

「あっ、朝は迎えに行けなくてホント悪かったな。」

さくら「そんな、気にしないで。私こそ一人で行けるのにいつも甘えちゃってごめんね。」

颯真(和真)「んーん。さくらはもっと俺に甘えて。その方が俺も嬉しいし。」

「と言うことで、今日もご褒美用意してるから。」

さくら「ご褒美??」

颯真(和真)「うん。このまま俺についてきて。」

そう言うと颯真(和真)はさくらを連れて目的地に向かって走り出した。

さくら(わっ、はやいはやい(汗)でも、風が気持ちいいー···)


○公園 放課後

颯真(和真)に連れられて到着したのは大きな公園だった。

さくら「ハァハァ、やっと着いた〜でもここって?」

颯真(和真)「まだ間に合ったな。」

「さくら、顔上げてみて。」

走って息切れしているさくらが顔を上げると···

さくら「わ〜桜のトンネルだぁ·····!!」

そこには満開は過ぎたが、綺麗な桜並木が続いていた。

さくら「綺麗···颯真くん、こんな素敵な場所に連れて来てくれてありがとう。」

颯真(和真)「おう。」
(ダチとの溜まり場が役に立って良かったぜ。)

二人は近くのベンチに座ると颯真(和真)はカバンからお菓子や飲み物を取り出した。

颯真(和真)「お菓子と飲み物、それと···春とはいえまだ風が冷たいからな、それ掛けて。」

颯真(和真)は持ってきたひざ掛けをさくらに掛けてあげた。

颯真(和真)「あっ、まだ寒かったら言って?俺があっためるから。」

さくら「えっ!?」

さくらはボッと、顔だけ赤く熱くなった。

颯真(和真)「フハッ、冗談だよ。
んじゃお花見デートするか。」

時折ヒラヒラと舞い落ちる桜の花びらが二人を優しく包み込むように、優しい時間が流れた。

颯真(和真)「桜と言えば“さくら”って名前、春らしくて可愛いよな。」

さくら「ありがとう。」

「私が生まれる前、お母さんが公園に咲いていた桜を見てすごく幸せな気持ちになって、生まれてくる子どもにも幸せがたくさん訪れますようにって想いで“さくら”って名前をつけたんだって。」

颯真(和真)「そうなんだ。幸せがたくさん訪れるようにか···いい親だな。
桜が咲いてる時期に名前を決めたってことは、もしかして誕生日近かったりする?」

さくら「あっ、誕生日は3月なんだ。先月終わったばかり(笑)」

「颯真くんは誕生日いつなの?」

颯真(和真)「俺は10月。今はもう家族で祝ったりとかはないけどな。」

さくら「そっか、じゃあ今年の誕生日は一緒に···」

さくらがそう言いかけた時、ちょうど桜の花びらが一枚上から落ちてきて、フワリとさくらの髪についた。

颯真(和真)が桜の花びらを取ろうとさくらの髪に触れた瞬間、さくらと目が合って······

ザァー······
その時、春風がいたずらに二人を引き裂いた。

颯真(和真)「っ······寒くなってきたからそろそろ帰るか。」

さくら「うん···そうだね。」

さくらに背を向けた颯真(和真)は桜の花びらを握りしめると
(この手の中にある桜のように、さくらも俺のものになってくれたらいいのにー)
と心の底からそう思った。
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