囚われのシンデレラーafter storyー
「……どうして? これまでなら、落とせていたはずか?」
静かな部屋に響く、本当に、心からの奥底から侮蔑するような声。
「それはそれは”いい女”らしいからな。そういう目で見られ慣れていれば、勘違いするのも仕方がないかもしれない。でも、今回は完全に相手を間違えた」
虚ろになりながら顔を上げると、地面に転がる虫けらでも見るような目を私に落としていた。
「これまで、どんな男を相手にして来ていたのかは知らないが、一つ教えてやろう」
震える私に、西園寺さんが視線を合わせる。
間近になったその目が、否応なく私に訴える。
「本気で誰かを愛している男は、心も身体も他の女を完全に拒絶する。それは全部彼女のものだからだ」
どうしてだか分からない。拭ったはずの涙が溢れて止まらない。
「おまえが思うほど、本気の愛は軽くない。
何があっても失いたくない。
大切であればあるほど、ほんの少しも苦しんでほしくないし、不安になんかさせたくないと思う。悲しませるどんな小さな原因も作りたくない。もし、それで泣かせるようなことがあったら……恐ろしくて考えたくもない」
その伏せられた目に、胸が締め付けられる。
「そんな男の気持ちが、分かるか?」
本当に、誰かを愛している人の目ってこういうものなのかな――。
涙で視界が曖昧なのに、怒りに満ちた眼差しの中に、西園寺さんの深く切実な想いが滲んでいることが分かった。
「彼女がここにいようがいまいが関係ない。むしろ、離れているからこそ、勘違いや誤解を生みだすものすべて排除する。もう二度と、あの笑顔を、歪ませたくない……」
それは、唯一漏れた、感情の載った声……。
これまで、私はそんな風に誰かに思われたことがあっただろうか。
「西園寺さん――」
そばにあった身体がすっと立ち上がると、その目からはそこに滲んでいた感情は消え去っていた。