囚われのシンデレラーafter storyー

「僕は、この2年、ずっとこの日を待っていたんだ。コンクールのことしか頭にないアズサの邪魔をしないように、僕のことをちゃんと見てくれる日まで待とうって! そうやって今、僕の気持ちを伝えているんだよ」

マルクの真剣な眼差しが胸に痛い。

「ごめん、マルク。軽率なことを言ったね。でも、私には大切な人がいるから、あなたの気持ちは受け止められない。ごめんなさい」
「アズサ、僕もごめん」

謝る私に、マルクが歪んだ笑みを見せた。

「僕も、簡単に言っているわけじゃないから、簡単に諦められないんだ。君は幸いにも結婚しているわけじゃない。恋に、出会った順番は関係ない。僕の気持ちは僕のもの。君を好きでいる権利も、気持ちを伝える権利もある」
「マルク――」
「僕は君を振り向かせてみせる。それでもだめだったら、僕は自分の意思で諦めるよ」

どう答えればいいのか――。

懸命に言葉を探す。

「休みに入る前にどうしても伝えておきたかったんだ」

張り詰めていたものが切れたように、今度はいつもの顔で笑っていた。

「なら、私もきちんと伝える。あの人は、ただの好きだの嫌いだので繋がっている人じゃないの。特別で大切で恋人以上の人。私の人生で、たった一人、運命の人だと思ってる。だから、他の人じゃだめなんだ。
じゃあ、ここまで送ってくれてありがとう。良い夏休みを!」

「アズサ……っ!」

マルクに手を振って、背を向けた。

どんなに心のこもった言葉でも、私の心にまでは届かない。

私の心には、他の誰も入り込めない。

あの人以外、誰も――。

思うだけで、胸を焦がす。

そんな人、西園寺さん以外にいない。

< 15 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop