囚われのシンデレラーafter storyー
7月に入ってすぐに、パリへと向かった。
西園寺さんのアパートに一週間滞在する予定で、そのまま日本に帰国する。
一週間も一緒にいられるんだ――。
飛行機の座席の乗り心地の悪ささえ、喜んで受け入れられる気分だ。
座席の向きが一方向で助かる。
この、どうしてもニヤニヤとしてしまう顔を正面から見られなくて済むからだ。
隣の席、空いていて、本当に良かった――。
緩む口元を隠すべく、両手で押える。
その時、プラチナの指輪が目に入った。
西園寺さんが、私にくれた指輪。
10年もの間、ずっと、持っていてくれたという事実にも密かに感動していた。
『何度か捨ててしまおうと思ったこともある。
10年前あずさと別れた時、日本を出た時、日本に戻る時。
でも、なぜだか捨てられなかった。
あずさと過ごした時間までも、消えてなくなってしまうような気がして』
そう言って西園寺さんが笑った。
『――あずさとの思い出には、苦い感情が伴っていたのに。消したくないと思う時点で、忘れたくなかったんだな』
そして、私に言った。
『それだけ、あずさは俺にとって特別な人だったってことだ』
薬指に小さく清楚に光る石を幸せな気持ちで見つめる。
もう、絶対に離れたくない――。
その指輪を包み込むように自分の手を握り合わせた。