囚われのシンデレラーafter storyー
「き、昨日って――」
「ああ。昨日、ここから一緒に帰って行ったのを見た」
見えてしまっていたんだ――。
少し考えたけれど、そう聞かれて隠すことでもないとすぐに思う。
「あの人は、恋人です」
正直に答えることにした。
「そうか……。パリに住んでいる男なのか?」
「はい、ここで働いているんです」
少し俯き加減の顔からは表情はうかがい知れない。
「あの記事にあった、君が、バイオリンから遠ざかっていた時に、もう一度向き合わせてくれたという……」
「そうです、その人です。恋人であって、恋人以上の人。私のバイオリンには、切っても切り離せない存在です」
そう言うと、松澤さんがふっと息を吐いた。
「じゃあ、昔からずっと付き合って来たのか?」
「いえ……いろいろあって、離れてしまいました。だからこそ、私は何が何でも成功したいと思ったんです。私はちゃんとバイオリンを弾いているって遠くからも伝えたいって」
「それなのに今一緒にいるのは、復縁したからか」
「コンクールのファイナルに見に来てくれたんです。一番見てほしい人だったから、本当に嬉しかった……」
あの日、佳孝さんが来てくれていなかったら、今私はどうしていただろう――。
「君から別れたのか? それとも、相手から……?」
「それは、彼に事情があったからで、仕方なかったんです」
「君の気持ちではなく、相手からの別れだったんだな」
そう口にすると、彫りの深い目が鋭く私を見た。
「一度でも手放すことが出来たのなら、二度目もできる……そうは思わないか?」
二度目――。
「そんなこと――」
「俺なら。もし、一度自分のものにしたのなら、何があっても手放さないと思う。これまで、そんな風に思える女に出会ったことがなかったから、余計にそう思える」
「彼は……私たちにはどうにもならない事情があったから」
「自分だけのものにしたいと思える女に出会ったら、それは俺にとっては唯一無二だ。絶対にどこにもやらない」
松澤さん……?
"私"ではなく"俺"と自分を呼ぶのを初めてきいて。
そんなことを感情的に話す松澤さんに、ただ驚く。