囚われのシンデレラーafter storyー
「彼女のインタビュー記事を読みました。一度やめたバイオリンに向き合わせ、再びプロの道を目指す背中を押したのはあなたなんでしょう。そして、私が想像したことが正しければ、あなたは彼女が世界で勝負できるバイオリニストになれると確信していたからこそ、彼女を手放した」
え――?
松澤の言葉に、その目を凝視した。
「彼女を手放したのは、2年前の事件のせいなのではないですか? 違いますか?」
答えない俺に、松澤は肯定と取った。
「当時、かなり世間を騒がせていましたよね? あの頃、日本にいたので覚えています。経済事件でありながら、まるで芸能ネタかのような扱われ方もしていた。そんなあなたと一緒にいることが、彼女にとってマイナスだと判断したから。そうではないですか?」
次々に放たれる言葉を、ただ何も言わずに聞いていた。
「同じ男として、その判断は理解できます。
なのに、どうして今になってまた彼女と一緒にいるのか、理解できない。
状況は何も変わっていない。むしろ、本当に夢を掴んだ今こそ大切な時期だ。彼女の影にあなたがいたら、ただ純粋に音楽を追及しその実力で世に出て行こうとしている彼女に余計な色をつけてしまう。ゴシップネタ付きの演奏家にしてしまうとは、もう考えられなくなったのですか?」
捲し立てるように吐かれる言葉すべてが、そのまま矢となって俺に向かって来る。ただそれを受け止めていた。
「こう言っては失礼ですが、あなたのお父様は罪を犯した人間であり、確かいまだ執行猶予中の身のはずだ。そんなものを今の彼女に背負わせようと?」
この男の言葉を、懸命に無になって聞き流そうとしていた。
感情的になってはいけない。少なくとも今は、あずさにとって大切な男だ。
『新たな境地にたどり着けた、そんな感じでした』
大絶賛されていた東京公演。あずさの表情を見れば、この男があずさのバイオリンをさらに引き上げたのだと分かる。
俺の身勝手な感情でぶち壊してはいけない。そう言い聞かせて。
でも――。
スライド写真のように、父の顔が映し出さた。
地獄の日々の記憶と今現在の壊れた父、あずさと一緒にいると決めてから蓋をしてきた葛藤、目を背けていたいと思っていたもの全部が束になって俺の目の前に突き出され、感情が剥き出しになってしまいそうになる。