囚われのシンデレラーafter storyー
――トントン。
玄関ドアを叩く音がする。
誰だ――。
アパルトマンの表玄関ではなく、部屋のドアを直接ノック出来るのは……。
ソファから勢いよく立ち上がりドアへと向かう。
”どちらさまで――”
フランス語でそう問いかけると、
「あずさです」
と返って来た。
すぐさまドアを開けると、そこに先ほど別れた時と同じ姿であずさが立っていた。
「何でここに……?」
どうして――。
呆然としてあずさを見下ろす。
「もう少し一緒にいたくて来ました」
きっぱりとそう言うあずさに、思わず声を張り上げていた。
「俺が、あんなことを言ったからだな。気にしなくていいと言っただろう。明日会える。あずさは今、一分一秒が惜しいはずだ」
俺が、感情に負けてあんなことを言ったから――。
「私が、もっと、あなたといたいと思ってここに来たの。だから、追い返さないで」
「あずさ……」
あずさが俺の胸に飛び込んで。それと同時に玄関のドアがパタンと閉じた。
「佳孝さん、いつもいつも私のこと考えてくれて、ありがと。それなのに、ごめん」
「あずさが謝ることなんて、何も――」
冷えた身体をあずさの腕がきつく抱きしめる。
「明日も大事です。でも、今も……私にとって今も大事だった。佳孝さんといたい――」
胸に押し付けられるあずさの頬の温もりが懸命に自分を留めようとする力を緩めて、あずさを抱きしめてしまった。
「あずさ……」
堪えていた分、こうして抱き締めてしまったら、溢れてしまって仕方なくなる。苦しさも葛藤も身勝手さも何もかも、あずさを求める気持ちと共に抑えられなくなって、力の限りで抱きしめて。
「佳孝さん――っ」
もう、耐えられなくなった。