囚われのシンデレラーafter storyー


この怒りは松澤さんに対してだけじゃない。自分に対してもだ。

「私、そんなこと何も知らないで……あの人に言ったんです。松澤さんは凄い人だって。自分のバイオリンを変えてもらえて、尊敬して信頼してるって。松澤さんに出会えたことに感謝してるって、私、あの人に――」

『凄い指揮者です。松澤さんのタクトで自分のバイオリンがどんどん変わって行くのを実感できる』

そう言った。
その時佳孝さんは、笑っていた。

『そんな人と大きな舞台で共演することが出来て、良かったな』

佳孝さんは、松澤さんのことを私に何も言わなかった。

「自分が許せないです。私の言葉に、ただ笑顔で。良かったなって。頑張らなくちゃなって……」

嗚咽が止められない。悔しくて悔しくて。

もう少し一緒にいたいって、その言葉を呑み込んだ佳孝さんの気持ちを私は何にも知らなくて。

その後に私が倒れて、私が大丈夫だと何度言っても佳孝さんは安心してくれなかった。

そして、自分を嫌というほどに責めながらそれでも私のことだけを考えて。

どんな気持ちで、私を励ましていたの――?
今、どんな気持ちでいるの――?

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