囚われのシンデレラーafter storyー



 翌日。バイオリンの練習を終えて、午後2時ごろにスタジオを出た。

 私には行っておきたい場所があった。
 帰国する前に、一度西園寺さんが働いているホテルを見てみたいと思ったのだ。

 彼が現場で働いていないということは知っている。でも、携わっているそのホテルを見たい。そんな、ささやかな好奇心からだった。

 パリの中心地、観光施設が揃う場所にある有名ホテル。世界中に展開しているホテルで、名前は知っている。
 西園寺さんの話だと、パリ市内にあるホテルの宿泊客の評価では5位から6位あたりに甘んじているとかで。なんとかトップ3を狙いたいと言っていた。

 ホテルのラウンジでお茶でもしようと密かに計画していたのだ。

 市内を走る路線バスに乗り、ホテル近くの停留所で降りる。そこから少し歩けばホテルの建物が見えて来た。

 パリによく見られる歴史を感じる建物。エントランスの前には、いくつもの車が行き来していた。

少し緊張しながらロビーへと足を踏み入れる。

わぁ――。

つい立ち止まり、見回した。

 高い天井と、サイドに配置された絨毯敷きの階段。優雅な内装は、クラッシック感満載で夢見心地になってしまう。
 いたるところにダイナミックにアレンジされている生花が、そのゴージャスさを際立たせる。バラの香りがさりげなく漂う空間は、まさに非日常の空間だ。
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