竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


 リディアさんの話によると、食堂に朝食を取りに行ったさい、たくさんの同僚たちに噂について聞かれたそうだ。お妃様候補のパーティーのために残っている女性たちは、そうとう混乱しているようで、侍女たちもどうしていいかわからないらしい。


「代表して私に会いに来るということでしょうか?」
「そうですね。アビゲイル様はお妃様に一番近い方だと言われていて、貴族女性の憧れの的ですから。彼女からリコが妾になっていない事を説明すれば、みんな納得するでしょう」


「お妃様に一番近い方……」


 リディアさんが何気なく言ったその一言で、私の胸にズンと重りが乗ったような気持ちになる。


(お妃様になるのは拒絶してるくせに、こんな気持ちになるなんて馬鹿みたい……)


 ベッドに小さなテーブルが置かれ、綺麗に盛り付けられた朝食が並べられる。普段なら大喜びしそうなその料理を見ても、私の気持ちは沈んだままで食欲が出てこない。
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