竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


「歴代のお妃様はたいてい高位貴族の女性から選ばれます。そのなかでもアビゲイル様は容姿端麗でこの国の歴史も積極的に学んでいますので、たぶんご両親の期待もあるかと……」


 そう言うリディアさんも日本にいたら美人の類に入る。シリルさんも美形だし、竜王様なんて時々彫刻が動いているんじゃないかと思うほどだ。そんな人たちの中でも容姿端麗と言われるのだから、アビゲイル様はそうとう美しいのだろう。


「リコはまだ体調が不安定ですから、お断りいたしましょうか?」


 ようやく食事に手をつけ始めた私を見て、リディアさんは心配そうにしている。彼女がせっかく用意してくれたのに、これじゃダメだ! 私はパクパクと勢い良く食べ始めると、ニッコリと笑った。


「大丈夫です! 食欲もありますし、元気ですから面会します」
「……わかりました。では、ここでは会えませんから、最初の客室のほうにアビゲイル様をお招きしますね」


 そこからは美味しいはずの料理の味がまったくしなかった。それでも私のために用意されたものだ。残さず食べ、リディアさんに身支度を手伝ってもらうと、最初に泊まった客室に向かった。
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