竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜

「準備が終わりましたので、競技場にご案内いたしますね」


 王宮から騎士団寮がある建物のほうに向かうと、たくさんの見物客で賑わっていた。競技場は騎士団の練習場も兼ねているらしく、奥にあるらしい。


(うわあ……人がたくさんいる)


 騎士団の寮で働く以外に、初めて外に出た。しかも今日は見物人もたくさんいるから、ものすごく緊張する。何か言われたらどうしようと思ったけど、今日の私はドレス姿だからか、誰も注目していなかった。


(これなら平和に競技会を見ることができそう!)


 競技場の入り口に着くと、すぐにアビゲイル様の姿が見えた。どうやら私を待っていてくれたみたいで、目が合うとすぐにこちらに向かってきた。


「おはようございます。迷い人様。よろしかったらわたくしのお友達をご紹介させてください」


 そう言う彼女の後ろには、五人の女性が立っていた。どの女性たちも色とりどりのドレスを着ていて、ひと目で貴族女性だということがわかった。


 それでもアビゲイル様が話をしてくれていたのだろう。この世界に来た日のような敵意はなく、ほほ笑みながら私を見ている。


(良かった。みなさん、私に怒ってないみたい。あれ? でもあの人……)


 しかしただ一人。一番奥にいた女性だけが、冷たい瞳で私をじっと見つめていた。

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