竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


(少しでも貴族女性に失礼がないようにしておかなきゃ!)


 私が見よう見まねで貴族ふうに挨拶をすると、アビゲイル様が「そんなことはありませんわ。迷い人様は謙虚で素敵です」とフォローしてくれた。本当にありがたい! しかも彼女が私に優しく接してくれるせいか、その後に紹介された女性たちも皆にこやかだ。


 リディアさんが言っていたように悪い噂は消えているようで、競技場の中に入ってからも、誰も私のことを気にしていない。それでも時折、後ろから視線を感じ、私は注意深く背後に意識を向けた。


(やっぱりあのライラさんていう人、私のことを見てる気がする。確かめてみよう……)


 気のせいだと思いたい。しかし私が出し抜けに振り返ると、彼女は眉間にしわを寄せ、憎々しげに私を見ていた。目が合ったとたん、にっこりとほほ笑んでいたけれど、彼女は私にバレたことも気にしていないみたいだ。


(やっぱり許してない人もいるってことね……)
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