竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


 しかもそのまた後ろには、バスケットを持った女性がおり、その中にはシーラちゃんが産んだであろう子犬が五匹入っていた。


『おお! シーラじゃないか! 死んだかと思ったぞ! それはおまえが産んだ子どもか? かわいいじゃないか!』


 喜びいっぱいのカルルの言葉に応えるように、シーラちゃんがキュンキュンと鳴いている。しっぽがちぎれるんじゃないかと思うくらい振って、カルルの体を舐めていた。


 するといつの間にか隣にいた竜王様が、大喜びでじゃれ合う二匹の様子を見て、私のほうを振り返った。


「リコは犬の言葉はわからないのか?」
「わかりませんね。キュンキュン鳴いて嬉しそうにしていると思うだけです」
「俺たちと一緒だな」
「ふふ。そうですね。でも良かったです」
「ああ、本当に良かった」
『よかった、よかった! ママだいかつやく!』


 食べない理由が判明し、領主も安心したのか、私達をランチに誘ってくれた。するとその話が聞こえたのだろう。竜舎を出る時には、カルルのこんな声が聞こえてきた。


『安心したら腹が減った〜! ご飯くれ〜』

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