竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜

「竜王様? じゃあ、今日はどうしたんですか?」
「ん……そうだな」


 何か用があって来たと思うのだけど、竜王様はいっこうに話さない。それどころか、「う〜ん」と唸りながら、妙に私から距離を取って飛んでいる。しばらくそうした後、竜王様はようやく私が腰掛けていたベッドのヘッドボードに止まって、顔をあげた。


「……話があるんだ」
「話……、あっ! その前に謝りたいことがあるんですけど、いいですか?」
「いいや、謝らなくていい。昼間の質問のことだろう? 今日はそのことで話をしにきたんだ」


 昼間私が竜王様に「赤ちゃんの頃に話せたか?」と聞いてしまい、そのせいであの場が暗くなってしまった件だ。でもそれだけ竜王様にとって、嫌な出来事を思い出す話題だったのだろう。


「あの、つらいことなら、話さなくても――」
「いや、話したいんだ。聞いてくれるか?」


 竜王様はつかまっていたヘッドボードから飛び立つと、私の膝に降り立った。小さな竜の姿だから、こんなに近くにいても緊張はしない。竜王様は大きなため息を吐いたあと、ゆっくりと子供の頃のことを話し始めた。

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