竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


「竜王様、お戻りお待ちしておりました。おや? ヒューゴの背中に知らない幼竜が乗っていますね。どうしたのです?」
「実は面白いことがあってな――」


 竜王様が私が幼竜と話せること、王宮に竜の保育園を作ることを皆に伝えると、わあ!と大きな歓声があがった。


「それは凄い! 騎士の仕事がだいぶラクになりますよ!」
「もうすぐ出産シーズンですから、すぐに取り掛かりましょう!」
「リコ様がこの国に来てくださって、本当に良かった!」


(嬉しい……、みんな喜んでくれてる! これならタイミングを見て、竜王様に告白できそう!)


 そう思うと、すぐに胸がバクバクと緊張してくる。いつ言おうか? 今日はまだちょっと心の準備ができてないから、明日にしようかな。そんなことを思っていると、遠くから竜王様を呼ぶ声が聞こえてきた。


「きゃっ! 誰?」
「どけてくれ! 私を誰だと思ってるんだ!」


 すると一人の知らない男性が、騒ぐ群衆を強引にかき分け、竜王様の前にひざまずいた。


「竜王様、お帰り大変お待ちしておりました!」
「リプソン侯爵ではないか。そんなにあわてて、どうしたのだ」


(リプソン侯爵……ということは、この人がアビゲイル様のお父さん?)


「お妃様選定の水晶が完全に灯りました! よって明日の朝、水晶の部屋にて、お妃様選定の儀を執り行います!」


 そう言って、リプソン侯爵は顔を上げ、私に向かってニヤリと笑った。
< 323 / 394 >

この作品をシェア

pagetop