婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される



「内容が変わったのはここ最近だな。外国からの観光客が多くなって、名物になる土産物が欲しくなったんだろう。でもそれで売上が上がって寄付金が多くなるなら良いんじゃないか?」



 今まであの戦いに関する事は見ないようにしていたけど、たしかにお祭りが盛り上がるのは良いことだ。それに私達のお店も儲かるもんね! 私も思わず父にニヤリと笑い返す。



「……ふふ。それもそうね!」


 そう言って3枚のタペストリーを手に取り壁に当ててみる。今日インテリアを白で統一したばかりだから、綺麗な薔薇と剣のタペストリーはシンプルな壁によく映えた。たしかにお祭り気分も盛り上がるし、なにより物は良いから綺麗だわ。こっちは外に飾ろうかなど考えていると、父が思い出したように「そうだ!」と言いこちらを振り向いた。


「おまえら、早く終わったなら出店を見てきたらどうだ? いつも全然見れないだろう? もう始まってるからたまには2人で出掛けてきなさい」


 その提案を聞いて一番に反応したのはエドだった。手をポンと叩いて少し焦っているようだ。


「そうだ!忘れてた! 金物屋に頼んでいたのがあったんだ。サラ、散歩がてら取りに行くのつきあってくれる?」
「いいよ。金物屋なんて、なに頼んだの?」
「後で見せるよ」



 なんだろう? 心なしかエドがウキウキしてるように見えるけど。新しい調理道具を買うだけではこんなに喜ばないだろうし。エドの謎の行動に首をかしげる。それでも2人で手をつないで店の扉を開けた頃には、私も久々のお出かけにワクワクしていたのだった。
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