婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される


「父さん達は王都に来る前キース王国に近い土地に住んでいたんだけど、まだ孤児もいっぱいいたし差別もあって大変だったよ。最近はそれも無くなって元キース王国の領地からも観光客が来てるから本当に良かったよ」



 そういえばエドのお父さん達はもともと違う土地に住んでいたんだっけ。きっと教科書には書かれないようなひどい環境を見てきたんだろうな。



「それにしても俺が子供の頃は、ドラゴンの杖とか無かったな。絵本もちょっと違った気がする」
「そうだよね?」


 私が子供の頃もなかったし絵本の内容も合っていた気がするんだけど。どうしてこうなったの? 不思議に思っているとお義父さんが絵本を手に取りパラパラとめくり始めた。


「たしか女の子がさらわれて王子が助けに行ったとか。あと女の子が敵の王子の魔力を吸ったはずだったけど、子供にはわかりにくいからかな?」


 たしかに絵本で表現するとなると、魔力を吸ってる意味がわかりづらいもんね。それよりはババーンと攻撃して倒しましたの方がわかりやすい。



「当時その場にいて捕らえられた貴族の男の証言があったから、王家には詳細な報告書はあると思う。まあでも絵本やお土産は娯楽だからね。」



 あ! さらわれた時ジーク王子を出迎えたあの貴族の男か! 生きて捕まっていたのね。誰がこの戦いの内容を知ったのだろう? とは思ったけど、そうかあの男の人がいたんだった。お義父さんが教えてくれた事になるほどね〜と思っていると、父がタペストリーを両手に持ちながらニヤリと笑った。
< 110 / 119 >

この作品をシェア

pagetop