婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
「ふふ。大事なのはここからよ! エド、見てらっしゃい!」


 勢い良く魔術道具が入っている引き出しを開け羊皮紙とインクとペン、そしてさまざまな大きさの中から一番大きな魔石を手にする。


「まずは魔法陣を書かなきゃね」


 今回は一番大きな魔石を使うので魔法陣との相性を良くするために、指を傷つけインクに自分の血を混ぜた。そして羊皮紙を広げ、切れ目ができない様にゆっくりと魔法陣を書き始める。


「えっと、まずは魔石に込めた最大火力の私の魔力を利用して、魔獣の幻を召喚、最後は証拠隠滅で幻を消すっと」


 これで合ってるかな? と自分が書いた魔法陣を手に取り見直すが、驚くほど自信がない。召喚術は少し書き方が違うだけで失敗するし、そもそも幻を出すのは召喚魔法なのかしら?


「それにこれじゃあ魔法陣と魔石は残っちゃう。もしエドが大きな声で叫んだら、護衛騎士が駆けつけて幻を見てしまうだろうし。しかも私の仕業だとわかったら、王家への反逆罪になってお父様捕まっちゃう!?」


 少しだけ名残惜しく魔法陣を見つめた後、バンと音を立てて机の上に羊皮紙を置いた。


 やめたやめた! こんなことをしてもオルレアン家がお取り潰しになるだけじゃない! 怒りに身を任せて行動していたけど、手紙や魔法陣を書いたらだいぶスッキリしてきたわ。


 それに悲しいけどあの2人、お似合いだもんね……


 バカバカしい。片付けようと思ったその時、バタバタとせわしなく走る音が聞こえ私の部屋のドアがノックされた。


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