イケメンエリート、最後の独身
「お水の方がいいですか?」
謙人は疲れた顔で首を横に振った。
「コーヒーでいいよ。
でも、まだ、頭の芯が痛い。どれくらいに飲んだのかすら記憶にないから、相当飲んでるんだろうな」
萌絵は謙人の顔色を心配しながら、冷たい水も準備する。
「コーヒー飲んで、水飲んで、頭がすっきりしたら、自分の家に帰るから。
長居はしないよ。萌絵ちゃんも色々とする事があるだろうし」
謙人は気を遣ってそう言ったのだけれど、萌絵は何だか元気がない。
すると、萌絵は勇気を振り絞るような素振りをして、謙人の事を真っすぐに見た。
「謙人さん… 昨日の夜に、私にキスをした事、覚えてます?」
謙人はドキッとした。
今、言われて思い出した。謙人は必死に冷静を装うがその挙動は絶対に見抜かれている。
「謙人さんも… ホヨンさんも…
簡単に誰にでもキスをするんですよね…
そこに気持ちがなくても、挨拶のような感覚で…」
謙人は違うと大きな声で言いたかった。でも、声が出ない。以前の謙人は、萌絵が言うその通りの人間だったから。