イケメンエリート、最後の独身


「こんなの今でもあるんだね」

 萌絵の手から時刻表を受け取った謙人は、感心そうにそう呟いた。

「残念な事に、東京の電車に関しては全く分かりません。
 私の地元の電車は一時間に数本しか走らないので、この時刻表がとても役に立つんですけど」

 謙人は苦笑いをした。そして、謙人もお手上げ状態のまま、その時刻表を萌絵に返す。

「萌絵ちゃん、とにかく早くスマホをゲットしなきゃいけないな」

「はい…」

 そこからは静かに時間が流れた。
 初対面同志で共通の話題が少ない二人にとって、その静けさは居心地のいい空気を運んでくれる。それは萌絵に限っての話かもしれないけれど。

 二回の乗り換えも、謙人のナビゲーションによって簡単にクリアできた。要所要所で萌絵は何枚も写真を撮った。迷った時の大切なツールとして。
 そして、謙人とは他愛のない会話をしながら、少しだけ友達になれた気がする。友達といっても、謙人は萌絵より八歳ほど年上の男性だけれど。

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