太陽と月の恋
一体どう道を踏み間違えれば私はここに来るのやら。

拓郎に突然振られ、一気に予定のなくなってしまった12月。
寂しさを紛らわすためジム通いを決めた。

「それでは本日はご入会前の体験となりますので、お着替えの後再度こちらのカウンター前にお越しいただけますか」

お姉さんは作られたような笑顔で体験日無料サービスのタオルとオリジナルミネラルウォーターを重ねて差し出してきた。

はあ、と軽く頷き受け取る。

「更衣室・シャワールーム→」と案内された蛍光ピンクの女性マークに吸い込まれるように歩く。

無料体験だし、今日で合わなければ入会しなければいい。

そう思いながら蛍光ピンクの重いドアを押し開け、更衣室に足を一歩踏み入れてギョッとした。

あまりにもみんなが堂々と下着姿のような格好でウロウロしている。
シャワールームから出てきたタオル一枚のおばさんも、一様に堂々としている。
周りの目なんて気にしないらしい。どんな体型であれ。
それでもやはり引き締まった体型が多い。

私は余計に気圧される。

やはり私の立ち入る世界ではなかったのかも。

コソコソと影の方のロッカーの空きを確認し、私なりに動きやすい格好(いつぞやのTシャツとジャージ)に着替える。

誰もこんな格好をしてはいない。素人感丸出しだ。

実際に通うようになればその時ウェアもお金掛ければいい。
< 8 / 59 >

この作品をシェア

pagetop