跡取りドクターの長い恋煩い
「現役は難しそう?」

「国公立はまず無理だ。
私立も……一般では無理だろうな」

「まだそう言い切るのは早いんじゃ……」

 今から1月まで頑張れば何とかなるんじゃないのか? 
俺は安易にそう考えていた。
しかし幸太郎の考えは違った。

「あと5ヶ月経ったとしても、受験ってこれからライバルが増えるばかりで、なかなか偏差値が上がらないのが現実だよ」

 ……なるほど。
幸太郎自身も一浪だから何か感じるものがあるのだろう。

「親は絶対に浪人させないって言ってるんだ。古い考え方だと思うけど、女の子は婚期が遅れるとか何とか……。
 笑美里自身はそんなこと全く考えてなくて、やっぱりどうしても医者になりたいみたいなんだけどな」

「浪人できなかったらどうするの?」

「系列の女子大に看護学部があるからそこに行くか、もしくは瞳と同じ管理栄養士か……その辺りだな」

 それはきっと笑美里の希望とは違うのだろう。幸太郎の顔にはその苦悩が現れていた。

「俺は、私立の指定校推薦を考えているんだ」

「指定校推薦?  ……あるんだ」

「ああ、自宅から通える医大で、一枠だけあるのはある。それを狙わせようと思ってる。
 幸いなことに、真面目だから学内の成績はトップクラスなんだ。このまま落とさなければその枠を狙える。ただ……」
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