跡取りドクターの長い恋煩い
 「……これ、隠し撮り?」

 「……‼  す、すまない! つい、出来心でっ」
 
 真っ青になった宗司くんが突然土下座をした。

 「ちょ、ちょっと……やめてよそれ。
私は聞いているだけなのに」
 
 「いや、だって……隠れて撮ってた……」
 
 あのアルバムの中の写真は、教授の誕生日パーティーの集合写真を年度ごとに集めたものと私の写真だった。高校時代の文化祭で撮った写真に大学時代の写真……。

 「……うん、驚いた。見たことのある写真もあるけど、大学時代の写真は……。
 宗司くん、朝倉コーヒーに来てたの?」

 「う……」

 もうここまで来たら観念するしかないと思ったのか、大きくため息をついた後、宗司くんは真実を語りだした。

 「……その、高校の文化祭の写真は瞳からもらった」

 「瞳ちゃん⁉」

 「瞳は、俺のことずっと応援してくれていて……あ、もちろん幸太郎もな」

 「お、お兄ちゃんも⁉」

 「文化祭の写真は頼み込んでもらった。
大学時代のは……笑美里が大学の最寄り駅近くの朝倉コーヒーでいつも自習しているって聞いて、その、たまに…………コーヒーを飲みに行っていた。
 ……あ、おい! 大丈夫か?」

 ふーっと目眩を感じた。
私は一体いつから見られていたのだろうか。

 アルバムの写真はすべて隠し撮りだ。

 私が真剣に勉強しているところ。お気に入りのキャラメルラテを楽しんでいるところ。うつらうつらと寝てしまっているところ。何年分かの写真が収納されていた。

 この角度なら、きっとあの席から撮ったのだろうということも推測できるくらい、私は大学近くの朝倉コーヒーにお世話になっていた。

そこは医大の近くということもあり、自習スペースがメインのカフェでとても居心地が良かったから。

 でもまさか見られていたなんて……。
< 132 / 179 >

この作品をシェア

pagetop