跡取りドクターの長い恋煩い
 「だからね、私達ってラッキーだったんだと思って」
 
 終業後、今日も宗司くんの部屋にお邪魔して晩御飯を食べさせてもらっている。
 ちなみに今日は肉じゃががメインで酢の物やゴマダレをかけた温野菜のサラダがついている。いつも通りとっても美味しい。

 お昼に千聖と話した会話の一部を宗司くんに聞いてもらっていたところだ。

 「偶然にも隣同士の部屋だったでしょう? だってシャワー浴びた後、宗司くんの部屋へ行くためにまた着替えるなんて面倒で考えられないよ」

 私のルームウエアはほとんどgelato piqueだ。もこもこの上衣の下はもこもこのショートパンツが多い。
 さすがに共用エレベーターで脚を出す勇気はない。

 「……部屋、隣同士にする方法ならあるぞ」

 「え?」

 「ここを空ければいい」

 「ここ? ……って、私たちの部屋ってこと?」

 「ああ。今このマンションの単身者向けフロアはほぼ満室だ。並び部屋は希望しても無理だろう。どうしてもというならここしかない」

 そう言って宗司くんはココ、と部屋を指した。

 「そんなことしたら私たちの住むところがなくなっちゃうじゃない」

 せっかく隣同士なのに、千聖たちのためとはいえ部屋を交換しちゃうのはちょっと……。
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