跡取りドクターの長い恋煩い
 ドアを開けると、シューズクローゼットをあわせて4畳ほどの玄関が現れる。

 「広っ!」

 「はい、簡易スリッパだ。家具とかは入ってなくて、全て一から揃えないといけない」

 30畳はあるリビングダイニング。

 キッチンは俺が主に入ることになるだろうと、少し高さを上げた設定になっている。

 こだわったのはアイランドキッチン。笑美里と会話しながら料理ができるようにと、一段下げたカウンターを広めに取り、簡単な朝食レベルなら、そこで食べられるようになっている。

 いずれ子供が増えても4人は座ることのできる広さがある。ここならダイニング学習も可能だよな。いや、カウンター学習か……。

そんなことを考えながら設計士とここの間取りを決めたりするのは楽しかった。
 
 「素敵……。すっごく広いのね」
 
 「この部屋は設計士と相談して全て俺が決めたんだ。……いずれ、笑美里と住むつもりで」

 「宗司くん……」

 「だから笑美里が一緒に住んでくれたら嬉しい」

 結婚を受け入れてくれたと言っても、そこからまだ一週間も経っていない。
 ここは……この部屋は重いだろうか?
 思い切って連れてきたものの、緊張するな。もし断られたりしたら……。
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