跡取りドクターの長い恋煩い
 「正直に言うと」

 正直に言うと?

 「嬉しい」

 「笑美里!」

 「大学時代にここの建設が始まったわけでしょう? 私が知らないずっと前から本当に好きでいてくれたんだなぁと思うと、嬉しいよ。でも……」

 でも?

 「ちょっと不安……」

 「不安?」

 「私、知っての通り料理は出来ないし、お掃除や洗濯も最低限のことしかで出来ないの。
 なのに、その……花嫁修業もせずに結婚しちゃったら、きっと宗司くんにたくさん迷惑をかけちゃうわ。それで宗司くんに愛想を尽かされたら……」

 「そんな心配はしなくていい」

 「そうは言っても……」

 そんなことは何も心配する必要がない。

 「日々の掃除は日中ルンパを動かせばいい。
洗濯は一緒にしよう。
料理は俺の特技だ。俺がやる! 
見てくれ。ここのキッチンは俺仕様に全て高めに設定してあるんだ! だから何の問題もない。ノープロブレムだ! 笑美里はここに居てくれるだけでいい!」
 
 「宗司くん……」

 「そうだ! このマンションは家事代行サービスも契約しているんだ。月に何回か来てもらうこともできるぞ!
 あとは……」

 「わ、わかった。だからちょっと落ち着いて? ……ね?」

 あ、マズい。ヒートアップしてしまった。
でもどうしてもここに住んでほしいんだよ。
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