跡取りドクターの長い恋煩い
 「え、笑美里……不安を感じる必要はないんだ。俺は結婚してもそのままの笑美里で居てほしい。そのままの笑美里が好きなんだ。俺の傍に廣澤笑美里として、一緒に住んでくれたらそれだけでいいんだ!」

 「……!」

 頼む!

 「……ありがとう。すっごく嬉しい……」

 笑美里が恥ずかしそうに笑った。

 「じゃあ……」

 「住むよ。ここに住む。廣澤笑美里になって宗司くんとここに住みたい!」

 「笑美里……!」

 そう言った笑美里が俺に抱きついてきた。

 やった! やっとだ。俺の設計したこの家にやっと笑美里と一緒に住めるんだ!

 しかも、廣澤笑美里って……。
 俺の言ったことにちゃんと応えてくれている。俺が一番欲しい言葉をくれる。

 俺は初恋に囚われて、盲目的に笑美里を愛してきた。
 時にアイドルに憧れるファンのように。時に長らく会えないでいる許嫁を想うかのように。

 ひょっとしたら、会えない間に笑美里は変わってしまっていて、俺が思い描いていた笑美里ではなくなっている可能性だってあったのだ。
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