跡取りドクターの長い恋煩い
　降りてきた階段とは別の、もっと装飾された階段の上にそのチャペルはあった。
階段の真ん中にはレッドカーペットが敷かれてあり、両サイドに人がたくさんいる。

　突然軽快な音楽が流れて、その１番上にウエディングドレスを着た花嫁と、王子様みたいなシルバーグレーの服を着た花婿が現れた。

　両サイドの人達が大声で
　「おめでとう！」｢お幸せに〜！」
　と叫んでいる。

　｢キース！　 キース！｣

　という声も聞こえる。

　すると、花嫁が花婿を見上げた。
　ニコッと笑った花婿は少し身を屈めて、花嫁にキスをしたのだ。

　俺はテレビの中のワンシーンを見ているような気分だった。あまりにも非現実的で目の前で起こっていることとは思えなかったのだ。

　｢あ〜！　 チューした！｣

　笑美里が叫んだ。
　幸い、そこにいる皆が花嫁と花婿に夢中で、小さな女の子が指を差して大きな声をあげていることには気づかなかった。
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