跡取りドクターの長い恋煩い
 「笑美里、ここで大きな声を出しちゃダメだ。会場に戻ろう?」

 「はなよめさん、きれい〜」

 そうだな。綺麗だな。

 「いいなぁ〜! えみりもチューしたい」

 はぁ?
 なんというおませさんだ。

 「そうだなー。いつかできるんじゃないのか?」

 適当に相槌を打って、笑美里の手をひこうとした。

 「えみりね、おひめさまのドレスもきたいの」

 「そうだな。いつか着られるだろう」

 手を繋いで歩き出したのに、笑美里はまた階段の上を見上げる。

 さっきまでキスをしていたカップルは、フラワーシャワーの中を幸せそうに歩いていく。

 「お花!  お花がふってる!  きれい〜!」

 はぁ……。
 これはしばらく動かないな。

 帰り道はとりあえず覚えている。反対側の階段を上がってトイレのところを曲がったらすぐに会場に辿り着くはずだ。
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