跡取りドクターの長い恋煩い
 笑美里とその小さい顔のイケメンは、兄妹で異彩を放って目立っていた。
 本人たちの容姿に加え、私立学園の制服効果もあったのだと思う。

 通夜振る舞いの間、子供たちは手持ち無沙汰だった。
さすがに通夜の席にゲーム機は持ち込めない。それに、みなそれぞれに成長し、思春期に差し掛かっていたのだ。
 ゲーム機というアイテムがなければ、どうやって話しかければいいのかわからないでいた。

 ところがそんな中、笑美里の兄貴が話かけてきた。

 「宗司、久しぶりだな」

 「幸太郎くん、最近ゲームやってないの?」

 「たまにやってる。前みたいには出来ないんだ。塾のない日曜日だけって決められたから」

 「そっか。俺も!
 受験前だからゲーム禁止なんだ。昌宗(まさむね)はまだずっとやってるけど」

 「宗司は中学受験か。大変だな」

 「幸太郎くんは?  受験しなかったの?」

 「俺は幼稚園から高校までの一貫教育校なんだ。だから受験はしていない」

 学ランの襟のところに『聖堂館』という文字が見えた。
 聞いたことはある。塾にパンフレットがあったな。確かカトリックミッションスクールと、その学校説明のパンフレットには書いていた。
 ということは、笑美里のあの制服も同じ『聖堂館』のものなのか。
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