跡取りドクターの長い恋煩い
 きゅう〜〜ん、と耳を下げながら飼い主の顔色を伺うようなワンコの宗司くん。綺麗なお顔とのギャップが……。
 反則です。可愛すぎるんですけど。

 最近の宗司くんは確かにスキンシップが増えすぎている。

 夕飯が終わると一緒にお皿を片付けるんだけど、私がお皿を持ってる間に後ろから抱きついて来たりする。手がふさがっている時を狙ってだ。

 それに軽いキスなら不意打ちで仕掛けてくるし、何度もされているとそれが日常のことになってくる。

 さすがに病院ではしなくなったけど、家ではやりたい放題なのだ。

 そんなことをされると、つい流されてしまいたくなるのだ。でも不安を残したまま流されたくない。

「……本当に?  約束守ってよ?
 点滴準備室でまたこの前みたいなことがあったら……」

「しない。絶対にしないから」

 両手を上げて降参ポーズ。

 ……はぁ……どうしようか……。

 この2週間で『好きになる』までは行かなくとも、この人の人柄に惹かれている私がいるのは事実だ。

 いやでも、やっぱり耐えられないかもしれない。
 
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