独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「――陽、性……」



思わず漏れた声は掠れていた。

指定された時間を待たずして浮かび上がった判定結果に、鼓動が速くなる。



「ここに、来てくれたの……?」



そっと、まだなんの変化もない自分のお腹に、震える指で触れる。



瑛さんとの赤ちゃん……! 



喜びに胸が震える。

けれど同時に、大きな不安が心を暗く覆う。

結婚の条件のひとつでもある、後継ぎを彼は切望していた。



瑛さんの願いが、条件が、もしすべて叶ったら?



……私はどうなるの? 



もう毎夜、求められなくなる?



……離婚もありえる?



次から次へと押し寄せる不安に押しつぶされそうになり、呼吸が苦しくなる。



しっかりしなさい。



私が赤ちゃんを守らなくちゃいけないのよ。



弱さに呑み込まれそうになる自分を、必死に叱咤する。

何度か深呼吸を繰り返し、無理やり心を落ち着かせてから、リビングに戻り、スマートフォンで病院を検索する。

この検査は簡易的なものだし、きちんと診察を受けなければ。

取るべき行動を理解しているのに、指が震えてうまく動かせない。

鼓動がやけに大きく耳に響き、無意識に焦ってしまう。


普段検索するよりも倍近い時間をかけ、やっと自宅近くにある病院を見つけた。

徒歩で十五分ほどの距離なので通いやすいだろう。

すぐに電話をかけ、診察可能か問い合わせる。

幸いにも今からなら大丈夫だと言われ、ホッと胸を撫でおろした。

髪を撫でつけ、大雑把に身支度を整える。

リビングに置いたままにしていたバッグを手にし、バタバタと走り出そうとしてハッとする。



……ゆっくり動かなくちゃ、赤ちゃんがびっくりしてしまうわ。



今まで感じたことのない、温かく満たされた気持ちに泣きたくなった。

好きな人との間に宿った愛しい命を大切にしようと心から思った。
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