【砂の城】インド未来幻想
「ラクシュミー、本当に助かったよ。それから遅くなったが……約束の品だ。貸してくれてありがとう!」

 そうしてシヴァは胸元から取り出した包みを、ラクシュミーへ軽やかに飛ばした。ガネーシャの刺繍絵が施されたパールヴァティーからの贈り物。見事に受け取ったラクシュミーは、にこやかにその手を振り、神の乗り物(ヴァーハナ)である大鷲(ガルダ)を旋回させて、北の方角へ去っていった。

「さぁ、行こう。私達の使命が待っている」

「はい、シヴァ様」

 ガルダの姿が見えなくなるまで二人は腕を振り続け、再び速度を上げたナーガラージャの上から、少女達が旅した砂の道を(さかのぼ)った。ドールに襲われた木々の領域、楽しく休息を過ごしたタマリンドの林。鮮やかなマンダリン色を灯し始めた黄昏(たそがれ)の頃、西の地平線にあの懐かしい街並みと、神聖なる墓廟のシルエットが浮かび上がった。







「ナーガラージャ、此処でいい。先に帰っていてくれ」

 墓廟の基壇に二人を降ろしたナーガラージャは、シヴァに優しく(おとがい)を撫でられるや、シュルリと舌を出した後、砂の大地に沈んで消えた。

「さ……これからは君の力が必要だ」

 柔らかく支える手に導かれ、コクリと小さく頷くパールヴァティー。シヴァと共に墓廟の中へ歩み入る。やがて宵闇が降れば、あの祭りの夜、思いがけず出逢えた紫色の世界が心に甦る。いや……あれはシュリーの計らいだったのだろう。お陰でナーギニーは恋を知った。そして全てを知ったパールヴァティーは……――


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