婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

 すっかり綺麗になったフェンリルに、オリバーとともに森でなにがあったのか尋ねた。

「なるほど……隣国からやってきた魔物が執拗にフェンリル様に襲いかかったのですね」
《ああ、不意打ちを喰らってあの怪我を負って、回復に専念するためこの姿で凌いでいたんだ》
「それで魔物が暴走してしまったのね。でもその隣国の魔物は、森の魔物たちをまとめたりしないのかしら?」
《あの魔物はむしろ暴走させて、破壊を楽しむタイプだ。幻影の森はオレの縄張りだ。必ず取り返す》

 フェンリルのシルバーの瞳には、揺らがない決意の炎が灯っている。

「よし、それでは我らコートデールの騎士たちもともに行こう! 準備があるから三日後でもよろしいか?」
《ラティシアたちの助けなどいらん。オレは幻獣フェンリルだぞ》
「今まで幻影の森を治め、我らの生活に安寧をもたらしてくださったフェンリル様の力になりたいのです。どうか手伝わせてください」
「私もフェンリル様に協力するわ。どんな怪我をしていても、息さえあれば治すから」
《……ふん、勝手にしろ》

 そうして三日後の魔物の討伐のためにそれぞれ準備を進めることになった。



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