婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

 魔物討伐の朝、私たちは幻影の森の入り口で作戦通りに行動を開始した。

 フェンリルとオリバーたちの精鋭騎士が森の中へ入り、隣国からやってきた魔物を探す。私はバハムートと空中待機で、発煙筒の合図があったら直ちに降りて怪我人を治癒する。

 その他、上空から戦況を見て必要な援助をすることになっていた。バハムートで魔物を倒す案もあったけど、フェンリルのプライドがそれを許さなかったので却下された。

「上空からだと木があるところはよく見えないわね。バハムートはなにか気配を感じる?」
『ふむ。相当強い気配があるのは感じるな』
「そう、何事もなく討伐できるといいけれど」

 しばらくバハムートが上空を旋回していると、突然森から鳥たちが飛び立っていった。その後、すぐに大きな音を立てて、森の中から爆発音が聞こえてくる。
 騎士たちの怒号と、獣の唸り声、それから聞いたこともないような叫び声が上空まで届いた。

「始まったわ! 少し高度を落として!」
《承知した》

 森の木に遮られて、戦闘状況が読めない。ヤキモキしていると、右手に合図の狼煙が上がった。

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