婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

 今なにかを通り越して、王妃だとかいうパワーワードが出てこなかった!?
 待って、役に立ってないって私は言ったわよね!?

 心の叫びも虚しく、完全に健康体になったコートデール公爵様が颯爽と私の前に膝をつく。そして左手を胸に当て頭を下げる。これは……あれだ、よく騎士様が王族とかの前で敬意を示すやつだ。

「ラティシア・カールセン様、文句なしの合格です。貴女様以外に我が国の王太子妃に相応しいお方はおりません。コートデールの名にかけて、ここに忠誠を誓います」

 またしても、失敗……!!
 しかも忠誠まで誓われてしまったじゃないの!! どうすればいいの!? ねえ、これどうしたらいいの!?

「ラティ、順調だね」
「ううっ、また……!!」

 耳元で嬉しそうに囁くフィル様を恨めしげに睨んでやった。少しは信用出るかもしれないが、やはり腹黒王太子の婚約者など一刻も早く辞めたい。

「おめでとうございます、ラティシア様! こんなにもフィルレス殿下の寵愛を受けておられるのだから、この国も安泰ですね」

 そうして、オリバー様が私にトドメを刺してコートデール公爵家の判定試験は終わったのだった。

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