1monthCinderella〜契約彼氏は魔法使い〜

<優良物件>

お母様の隣にいたことで、もう志摩さんも佳子も近づいてこない来ないし、知らない人も声をかけて来ることがないのでホッとした。
そして、お母様が気さくな方でよかった。
竜基さんの姿を探すと、竜基さんの周りにはたくさんの人がいてその中に志摩さんも佳子もいなかったので少しホッとした。
さすがに志摩さんもビジネスに関わる事に関しては自制が効いてるのかも。
でも、佳子は・・・
そんなことを考えていると竜基さんが戻ってきてエスコートしてくれた。

「大丈夫?もう少しだから」

「平気です。しっかり努めますね」

秘書の影山さんやNインポートの方々と話をしてからお手洗いに行くと竜基さんにこっそり伝えてその場を抜けた。

疲れた〜

便座に座って靴を脱いで足の指を開いたり閉じたりしたあとふくらはぎを少し揉んでから個室を出ようとした時、手洗いカウンターから話し声が聞こえてきた。

「長友社長が連れてきた女ってめちゃくちゃ若くなかった?」

「それ思った」

どうしよう、私の事だよね。
こんなベタな話ってあるんだ、出て行きにくい。

「婚約者って感じは無いよね」

「あれじゃない、コンパニオン的なやつ」

「あああ、それね。じゃあ、まだチャンスはあるかな」

「何それ、もしかして社長夫人の座を狙ってるわけ?」

コンパニオン・・て
竜基さんってモテるんだ、ってモテるよね。

「だって、あのビジュアルで社長で独身とか狙うしか無いじゃん!正に優良物件よ」

そうか、私はまだ学生だし今は結婚とか考えられない。だからこそ竜基さんは偽恋人として私を選んだ訳だし、そのおかげで私も人生変わるレベルで変わることできた。
一般的には竜基さんは結婚適齢期で美味しい物件ってことなんだよね。

「何とか連絡先をもらおう」

「あんたのその行動力を見習いたいわ」

「ほら、早く戻ろう。コンパニオンと離れた時がチャンスなんだから、しっかりと狙わないと」

そう言うと顔もわからない女性たちが出ていく音がした。

「コンパニオンかぁ、意図したことじゃ無いけど盗み聞きとかめちゃ疲れたし、少し凹む」
個室のドアを開けるときに思わず独り言を言ってしまった。
一月前の私だったらこんな言葉に傷ついたかな?というか、地味すぎてコンパニオンには見えないし、“優良物件”と一緒にこんなパーティにも出席してない。


化粧直しをして、竜基さんに貰ったリップを塗ると唇を合わせて馴染ませる。

よし戻ろう

気合を入れようと思った時、鏡に佳子が映った。
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