1monthCinderella〜契約彼氏は魔法使い〜
リップをバッグに仕舞うと軽く頭を下げて通り過ぎようとしたが腕を掴まれてしまった。
無言で振り解いたら面倒な事になりそうだ。

「何か?」

「まさかあなたが居たとは思わなかったわ、彼女たちに虐められていたの?」

え?なに??
男性に声をかけられたときも助けてくれたと思ったのに何かの牽制みたいだったから、今回も私を心配したということではないだろう。

「何も無いですよ」

「じゃあ、コンパニオンって言うのは本当だったのね、真実なら虐めとかじゃ無いものね」

「コンパニオンじゃ無いですし、面と向かって言われたわけではないですから」

佳子は個室をチラッと見て「盗み聞きか」と言って小さく吹き出した。

「結果そうなりましたが、せっかく話が盛り上がっているところに顔を出すもの悪いと思っただけです。それでは」

すごく感じが悪い。
竜基さんはこんな人が好きなんだ。

「あの居酒屋でアルバイトしてるんでしょ、魂胆が見え見え。大方、そこで恋人の“フリ”でもしてくれとお願いされたんでしょ」

遠くはないけど近くもない、っていうか偽ということはバレてる?
てか、バイトのことを知ってる?
気持ち悪い。
「私の事を調べたんですか?」

「どうして?小蝿の事なんて気にならないし単に偶然知っただけよ」

ジミクラ、家政婦のミタ、コンパニオンに小蝿か・・・コンパニオンがすごい褒め言葉に聞こえる。実際、コンパニオンってスタイルがよくて美人のイメージがあるし今までの事を考えたら、やっぱり褒め言葉だよね。
そんなことを考えていたら佳子が私が何かを答えるのを待っているようなので「そうですか」と答えた。

「長友商事にとって外食チェーンであるベルウッドは相性がいい強力なパートナーになるの。そして、竜基と私もね」

竜基さんはパーティのあとで佳子と会うんだろうか?
どちらにしてもこの関係は今週には終わる。竜基さんの就任披露パーティというこの時期に現れたというのは何だか計算されたようなタイミングだ。

返事をせずに佳子の横をすり抜けるように出て行こうとした時

「ねぇ、あなたは気がついてる?竜基っておへその横にホクロがあるの」

無視をしてそのまま通り抜けた。
そんなの知るわけない、何時も最後までしてないし。

でも、どうしてわざわざそんなことを私に言うんだろう。
私が仮だとしても、好きな人が他の女性と一緒にいるのは嫌だから?

私だって竜基さんが他の女性と居たら嫌だけどあくまでも仮だから、最初からそ言う契約なんだから欲を出してはいけない。
目的は果たしたんだからこれで終わりなのかな?

「亜由美」

竜基さんは私の姿を見ると駆けて来てくれた。

「遅くなってごめんなさい」

「大丈・・夫」
肩を抱く竜基さんの顔を見上げると私の先を見ていた。
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